介護の仕事というと、どうしてもネガティブな面がフォーカスされてしまい、ニュースなどを見ていても前向きな話があまり聞こえてきません。その影響もあってか就職先としての人気も低く、慢性的な人手不足におちいっています。
しかし情熱をもって介護の仕事に従事されている方は、そんなネガティブさを跳ね返す、その人なりの「楽しみ」や「やりがい」を持っているはず。そこで今回は、25歳で営業職からヘルパーに転身し、15年目の現在は「デイサービス グランドジェネレーションパートナー」の代表取締役を務める若山さんに、「介護の仕事の楽しさ、やりがい」をお聞きしました。
「ありがとう」と言われるのではなく、「ありがとう」と言いたい仕事
ー若山さんは元々介護に興味があったわけではなく、「資格を取ったからとりあえず」ヘルパーとして働き始めたと伺いました。
それが今ではデイサービスの代表を務めるまで介護に「はまって」いらっしゃる訳ですが、そこまで介護の仕事にのめり込むようになったきっかけというのはあるのでしょうか?
ヘルパーになって一番最初に担当した男性の影響が凄く大きいですね。
60歳くらいの若い方でしたが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)だったんです。
筋力が低下して最終的に死に至る病気で、その方は出会ってから半年くらいで亡くなってしまった。
最初は手引き歩行ができていたんですが、1ヶ月後には車椅子になって。
そのうち食事介助が必要になって、どんどん飲み込みも悪くなっていって。
むせてしまうとこっちはもうパニック。
介護の世界に飛び込んだばかりで、ヘルパー2級の勉強しかしていないわけですから。
でも僕が怖がりながら介助しているのをその方は分かっていてくださったんですよね。
落ち着いた後に「大丈夫だよ」って声をかけてくれて。自分が辛いのに、逆に僕を気遣ってくださる優しい方でした。
お葬式で奥さんに挨拶したとき「旦那はいつも若山君の話をしててね、すごく応援してたんですよ」って言ってくださって。
その方は僕が資格とりたてのど素人だと知っていて、自分を育てようとしてくれていたんですよ。
ヘルパーを変更することなんていつでもできるのに。
その思いを感じたとき、「ありがとう」って言われる仕事がいいな、なんて言っていた自分はなんておこがましかったんだろうって痛感しました。
「ありがとう」って言われたい?何生意気なこと言ってたんだろうって。
利用者さんからいろいろなことを学ばせてもらえて、逆にこっちが「ありがとう」って言わなければならない立場じゃないのかって。
利用者さんのほうが全然大人でこっちは全然子どもなんだということが、その方と出会って良く分かりました。
今では現場経験も積み、プロ意識をもって仕事をしていますが、当時感じた初心は忘れていません。
介護職員は、利用者さんから色々なことを学んで成長できる
ー若山さんが考える、介護の仕事ならではのやりがいや楽しさとは何ですか?
人間として成長できる、鍛えられる仕事、というところです。
人生の集大成を迎えている人の話を生で聞けるんですから。
年長者の方たちってすごくいいものを持っているんですよ。
何ていっても、今の僕たちの何十倍も経験を積んでいる人達だから。
物事の考え方や捉え方、判断の仕方なんかが、日常会話を通じて心の中にすっと入ってくる。
ーそういった話って、介護の仕事ではないとなかなか聞く機会がないですよね。家族に高齢者がいてもあまりじっくり話すこともないですし。今までたくさんの利用者さんとお話しをされていると思いますが、その中で印象に残っている「考え方」はありますか?
うちには小3の息子がいるんですが、小1の頃は超暴れん坊だったんです。
そのことを利用者さんに愚痴っていたら、「今は良いの、そのくらいの頃は元気が一番。後2,3年したら勝手に落ち着くんだから、目くじら立てることないのよ。」って。
そう聞いて今までもやもやしていた心が、すっと軽くなりましたね。そういうものなんだな、と。
あとはデイサービス事業を始めて1年経った時。
「今は一番大変かもしれないけど、これがずっと続くわけじゃないから頑張れよ。
でもある程度経営が軌道にのってきたら、今度はあやしい虫が必ず寄ってくる。
そういう悪いのに騙されないようにしなきゃだめだ。
騙されないためには、損得勘定抜きにひとりの人間として付き合ってくれる奴をつくって、そいつに相談しろ。」
と教えてくださる元経営者の方もいらっしゃいました。それもすごく心に響きましたね。
介護の仕事に向いているのは、「人が好き」で「素直」な人
ーここまで読んで、介護に興味を持ってくれた方もいらっしゃると思うのですが、若山さんが考える「介護職に向いている方」はどのような方でしょうか。
介護って、病院と違って治療はできないけど、その分利用者さんの人生の時間に寄り添うことができる仕事。
人と人とが触れあうからこそ、介護の仕事ってすごく魅力的だなと思うんですよね。だからやっぱり「人が好き」な人。あとは「素直」な人です。
僕が採用するときもこの2つがあれば年齢など他の条件は気にしないですね。
若山克彦 (デイサービス グランドジェネレーションパートナー 代表取締役)介護の現場を12年経験した後、独立。何でも至れり尽くせりの受け身なサービスではなく、生活に意欲を取り戻せる能動的で新しいデイサービス事業を展開している。
また、レクリエーション介護士2級、関東第一号講師として、専門学校でも多くの講義を行っている。
HP:デイサービス グランドジェネレーションパートナー
介護職netコラムについて介護職netコラムでは、介護職netに掲載している求人情報からの情報と、編集部が集めた情報を元に記事を作成しています。
関連記事
介護の求人情報を見る時のポイント 介護の仕事を長く続けるには?<上>〜体調&メンタル管理〜編 介護の仕事を長く続けるには?<中>〜身につけておくべき知識〜編 「辛い」「辞めたい」介護職員は悩みとどう向きあえば良い? 福祉の専門学校が学内に“高齢者サロン”を設けた理由とは?介護職の就転職の記事
どんな人が向いている?施設別「性格&スキル」一覧 良い施設を選ぶには?見学時のチェックポイントを紹介! 介護レクリエーションの悩みを劇的に解決する方法とは? 実務者研修とは 福祉の専門学校が学内に“高齢者サロン”を設けた理由とは?時間も体力も無駄することなく、希望通りの条件の施設に転職できたのはなぜ?
介護職員は実際どんなことをしているのか、デイサービスに勤務している介護職員に密着!