介護の仕事の課題で最も多く出るのが「レクリエーションの企画・運営」について。
レクリエーションの課題はどうしたら解決できるのか、レクリエーション介護士の講師である富永さんと藤井さんを直撃インタビューしました。
ちょっと視点を変えるだけで、レクリエーションの内容だけでなく、職員の業務負担までも劇的に改善できてしまう、大きなヒントが見えてきました。
「介護の仕事の課題」ダントツ1位はレクリエーション
― レクリエーション介護士資格が誕生した背景を教えてください
富永:きっかけは現場の声でした。以前、経済産業省の受託事業で関東だけでも100以上の介護施設を訪問し、現場の方々の声をお聞きした成果を元にレクリエーション介護士は誕生しました。
そこでわかったのは、“レクリエーションに対する課題”を抱えている職員がダントツに多いということです。
現場では日々悩まれているにも関わらず、レクリエーションをきちんと学んだことのある方はとても少なく、学ぶ場所もないのです。
それまで私たちはインターネット上でレクリエーション素材を無料で提供する「介護レク広場」を運営してきましたが、こういった素材をより活かすことのできるスキルを学ぶ場が必要であると私たちは考えたのです。
解決方法1:生活の中の「楽しさ」をレクリエーションと捉える
― レクリエーションはなぜ現場の課題となるのでしょうか?
富永:相手が高齢者だからと、難しく考えすぎてしまっていると感じます。
「空いた時間にレクリエーションを当てはめなければ」とか、「新ネタを探さなくてはいけない」など、必要以上に負担に感じてしまっているのではないでしょうか。
これを解決する方法は、「レクリエーションに対する考え方」を変えることです。私たちは、生活の中の楽しさそのものがレクリエーションだと捉えています。
たとえば、利用者の中には「出かけるための準備の時間」が楽しい方もいます。
「それってただの生活習慣では?」と感じるかもしれません。多くの高齢者も、昔は好きなことや趣味に対して創意工夫をしながら生活するのがあたり前だったのに、そういった事が生活から消えることにより、生きる張り合いや意欲を低下させてしまうことが多々みられます。
人によっては手先を使って作るものだったり、体操や運動かもしれません。その方が好きだったもの、興味を持っているものを見出して、昔のようには完璧にはできなくても工夫して楽しめるようにサポートをしたり、あるいは最新の流行やアイテムを取り入れることで、「社会とつながっている」という実感にも繋がります。
人生や生活の楽しみ、生きがい、うるおいを見つける支援、それが介護レクリエーションの役割だととらえています。
― 具体的にどのようなことを実践されるのでしょうか?
藤井:私が運営をサポートしているデイサービスでは、利用者さんのその日の気分で茶碗を選んだり、お弁当業者を集めて毎日3つの中からセレクトできるようにしたりと、日常の生活習慣にアレンジを加えて選択できるように工夫しています。
また、一同に同じことをするだけではなく、一人ひとりの「楽しい」を一緒に見つけていけるよう支援をしています。 たとえば、書道が好きな方は「級」や「段」をもっていて、かつては上達に向けて練習されていたのであれば、今も独自の“資格”を提供します。ただ単に「書くこと」が目的ではなく、習字をすることに張り合いや喜びが生まれます。
富永:生活の中に“当たり前の選択”をとりいれるのはすごく重要ですね。 人は生きていく上で常に何かを選択し、そのたびに脳を使っているそうです。何でもやってあげることが真のホスピタリティではないんですよね。
解決方法2:現場で実践するために「スタッフ同士で議論する」テクニックを学ぶ
― レクリエーションに対する固定概念が大きく変わりました。ただ、頭では理解できても、現場で実践するのは簡単なことではないように感じますが。
藤井:身につけた知識を現場で活かすには、施設ごとに実現に向けた課題があり、それを周囲のスタッフと共有し、場合によっては利用者のご家族にも協力してもらう必要があります。
そのため、レクリエーション介護士の講座では、“受講生同士で議論すること”を特に重視しています。 「レクリエーションのネタを教えてもらえる」というイメージで来られた方は最初戸惑われますが、受講後は、明らかに表情が変わります。後のち現場の状況を報告をいただくことも多く、とても嬉しいですね。
― 「スタッフ同士で議論する力」まで学習できるとは、目から鱗です。
藤井:スタッフ同士でコミュニケーションを取り、周囲の協力を得られるようになると、単にレクリエーションが充実するというだけでなく、スタッフ自身の業務量も減るんですよ。
例えば、「レクリエーションで使用する牛乳パックを集める」という作業一つとっても、自分一人で集めようとすれば大変ですが、ご家族や近隣の方にお声掛けをすればすぐに集まります。更に、そういったきっかけで家族や地域の方とのコミュニケーションを取り、信頼関係を育むことができれば、レクリエーション以外の介護のシーンでも自然と協力していただけるようになるんですよ。
行動を一つ変えるだけで、職員一人ひとりの労力も軽減されるのです。
職場のレクリエーションを改善したい方へ
― 介護従事者の方へメッセージをお願いします。
藤井:施設ごとの風土や慣習を変えて、新しいレクリエーションを展開していく上では、スタッフ一人の力では解決するのが難しいケースもまだまだ多いのが実情です。我々レクリエーション介護士のネットワークや協会でも「現場での解決方法」を模索し、広く共有していきたいと思っています。
富永:レクリエーション介護士は来年新たに1級のリリースが予定されています。現場経験を積んだ方々が、自分の必要な知識をセレクトし、より専門的に深められるようなものになる予定です。レクリエーションを通して仕事の質を高めたいという方にはぜひ、挑戦していただきたい資格です。
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